キス、涙々。



焦るわたしとは対照的に、加賀屋くんは何事もなかったように接してくれていた。


もしかして、あえて?

あえてわたしのミスをなかったことにしてくれてるの?加賀屋くん……



それはそれで申し訳なくて、わたしは自分から頭を下げた。




「ごめんなさいっ!!」

「は?つーか声でか」



耳を押さえる加賀屋くんに、わたしは腰をしっかり90度。

いくら動転しているとはいえ謝罪の極意は心得ている。


どこで培ったかは……言うだけ野暮、というものだ。




「おまえのちゃんとした声、はじめて聞いた気がする」

「ちゃんとした声……」


「で、なにがごめんだって?身に覚えがねーんだけど」

「え?ピアスのとき……加賀屋くん怒ってた、よね?」



わたしがしっかり指導できなくて、おどおどしてたから。

だから加賀屋くんはわたしに呆れてたんじゃないの?


そうやって話すと、加賀屋くんはもっと怪訝そうな顔になった。


うっ……その顔、怖いよお……