まあ、こんな地獄のような時間にもいつか終わりはおとずれる。

すこし離れたところで検査をしていた男子委員が声をかけてくれた。



「八尾さんお疲れさま。そろそろ戻ろうか?」

「あ、うん!お疲れさま!そうだね。もう誰も、」



いないし……

と言おうとした瞬間だった。



振り返ったさき、目の前いっぱいに広がる誰かの身体。


え、と思う間もなく抱きつかれる。




「うひゃあ!え、だ、だれっ」



なんて、考えればすぐわかることだったけど。


こんな時間。

ましてや、わたしにこんなことをしてくる人はひとりしかいないのに。


あせっていたわたしは、誰かの腕のなかでわたわたする。





「あー、ねむ」



降ってきた低くて抑揚のない声には聞きおぼえがあった。


ぐいっと身体を押しやると見慣れた姿があらわれる。




「は、ハギくん!わたしは抱き枕じゃないからっ」