キス、涙々。



「とりあえずそれ、結んでもらおっかな」

「そ、それ?」

「ヤオがずーっと大切そうに握りしめてる、それ」

「あっ、ごめん!ずっと持ってて」



ネクタイのことを言っているのだと気づき手をひらく。


わたしがいろいろしたせいで、ネクタイはもうぐっしゃぐしゃ。

そのまま返すのもためらってしまうくらいだった。



でもハギくんはそのままでいいと言ってくれる。


そのかわりネクタイを結ぶように頼まれ、わたしは二つ返事で引き受けることにした。



いつもだったら自分で結んでもらうところだけど……今回だけ。

うん、今回だけだから。



自分に言い聞かせながらハギくんの首に手をまわそうとした、けど。


抱きしめられていることを思い出して、収まりかけていた熱がどっと戻ってくる。




「ええっと……ですね、はな、離してもらっても、イイデスカ……?」

「だめ。このままやって」

「はえ……そんな無茶苦茶な」