キス、涙々。

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「ほんとに全部言ってくれちゃって……おかげで俺の言うことなくなったじゃん」


ハギくんは呆れたように声を漏らした。


向こうはかなり盛り上がっているようで、熱気がこっちまで伝わってくる。


地面に座りこんで顔をおおっていたわたしの頭に、ハギくんの手が乗った。



「いまの聞こえた?」

「うん……、うん」

「そ、よかった。いまなら胸、タダで貸してあげるけど、どうす──」


言い終わる前に、その胸に飛び込んでいた。

わたしの肩にかけてくれていた王子さまのマントが地面に落ちる。


いきなりだったけど、ハギくんはよろけることなくわたしを抱きとめてくれた。


ぎゅうっと背中に回したわたしの腕とは違って、背中にあてられたハギくんの手は優しかった。



「泣くのが悪いことだとは思わない。もちろん、卑怯でもなんでもない。それだけはわかってよ、ヤオ。完璧な人間なんていないんだよ、どこにも」


いつもより低く、穏やかに聞こえる。

こんなにも近くにいるからなのか、声がダイレクトに伝わってきた。


わたしの喉からはいまだ、ひっくひっくと嗚咽が漏れている。

だけどもう、それを情けないとは思わなかった。




「──────……うん」