この可愛さは、俺と結乃の遺伝だ。



 高校を結乃が卒業したあとは、俺と別荘で同棲。

 いっぱい愛を注いで、ここまで二人で歩んできた。

 この幸せな日々が、俺達から去りませんようにと毎日思っていた。

 いや、毎日思っている。だな。


 
 ピーンポーン。

 インターホンが鳴って、居たのは、やはりちせとユキセだった。

「こんにちは、鈴さん」

「ユキセくん、こんにちは、偉いね挨拶できて。」

「とーぜんですよ。俺はもう小五ですし」

「あはは、そうだね」

 はー乃音目当てだよな〜。

 この二人、ユキセと乃音は、俺とちせの関係で、幼なじみだ。

 まぁ、この二人が両想いなことぐらいわかっている。

「ユキセくん!」

「あ!乃音!」

 ギュッとユキセに抱きついた乃音に対して、頭を優しく撫でたユキセ。

 ところどころムカつくヤツだ……。

「えへへっ、大好きユキセくん」

「ふふっ、俺も大好きだよ?」

「本当?」

「本当」

「えへへ、嬉しい!!」

 ユキセの胸にスリスリと頬を当てる乃音。

 チッ、ムカつく……コイツ小五のくせに身長150以上ぐらいありあがって……。

「鈴さん、結乃さん、将来乃音をください」

「え!いいよ!ユキセくんになら任せられる!」

「ちょ、結乃!?なに勝手に!」

「ダメ……?」

「っ……!!」

 またそんな顔して!!

 結乃の上目遣いに俺は勝てないって知ってるでしょ……。

「はぁ……まだ先のことだし、わかんないよ」

「うっ……そうだね……」

「まぁいいです、俺が乃音のことが好きなのは変わらないし」

「結瀬くん……!」

「ふふっ、かーわい」

「っ……」

 なにコイツ……俺の高校生の時のことみたいなことすんじゃん……。

 これじゃあ言うに言えないな……。

 あーもう……。

「ちせ、今日いつまでいんの?」

「俺はもう帰るよ、迎えに車行かせるから、そしたら結瀬は帰る」

「あーはいはい」

「結輝が心配だ……」

「おい、自分の息子のことも心配しろよ」

「あーコイツは柔道、空手をやらせてるから大丈夫だ。」

「はぁ……」

 それでも心配ぐらいしてやれよ……。

 あ。

「心配してやんないと結輝さんが悲しむぞ?」

「あっ、それはダメだ」

 ふっ、結輝さんに弱いヤツめ。

「結瀬、なんかあったら連絡するんだぞ〜」

「はいはい」

「宿題終わった?」

「ううん、まだ終わってない」

「手伝おうか?」

「いいの?!」

 目をキラキラさせた乃音。

 こんなちーさい頃から恋愛してんのか……。

 ちなみに乃音は、小学三年生だ。

 まぁ、正直言ってしまえば、結乃が居てくれさえ居れば、ユキセに乃音を任せてもいいとかは思ってる。

 結乃も是非是非って顔してるし。

 まぁ結局は、乃音が幸せならいいんだけど。

「鈴さんは、どうやって結乃さんと付き合ったんですか?」

「?なんで急に」

「“参考に”したいと思いまして」

 参考に?ねぇ……。

「えっと、結乃に告白させた」

「させた?」

「うん、勢いで好きって言いそうだったから、意地悪して言わせたんだよ」

「へぇ……」

「うん」

 ふっ、あの時の結乃も可愛かったなぁ……。

「ちょ、鈴くんっ……!!恥ずかしいからっ……!!」

「ふっ、照れてんの?かわーい」

「っ……!!ユキセくんもいるんだからやめてよ……!!」

「お気になさらず」

 わかってるな、ユキセ。

「あ、鈴さん、もう一ついいですか?」

「うん」

「どうやったらドキドキさせられるんですか?」

 は?コイツわかってるんじゃないの?


「えっとね」

 まぁいい機会だ、教えてやろう。

「見ててね」

「あ、はい」

「ゆーの!!」

「?鈴くん、どうしたの?」

「ちょっと来て」

「う、うん」

 そのまま手を引いて、ギュッと抱きしめた。

「へっ!?」

「ユキセ、こうしたら、まず耳元で、」

「はい」

「可愛い、大好き、愛してるよ」

「ひゃっ!」

 あー可愛い反応……。

「り、鈴きゅっ……」

「で、そしたら、」

 ちゅっ。

「んんっ……!!鈴っ……く……んっ……!!」

 なんかいも唇を押し付ける。


「こうして、」

「は、はい」

「ふぁ……」

 あー本当に可愛い……。

 優しく頭をさりげなく撫でてあげた。

「んっ……!!」

「やめて欲しいならギュッてして?、だいしゅきって言ってごらん?」

「ふぁ……だいしゅきっ……ゆるちてください……」

 ギュッと精一杯の力で抱きしめてきてくれた。

 あー……もう本当に可愛い。

 本当に天使だ……。

「こう言うこと、わかった?」

「は、はい……」

「り、鈴くんっ……、ユキセくんにはまだ早いよ……?」

「いいんだよ、自分から言ってきたんでしょ」

「そ、そうなのかもしれないけど……」