「正気か?大丈夫か?ショックでも受けておかしくなってるんじゃないか?」

「ぷっ、楽しみだ。結乃の、可愛い泣き顔。」

「!!お前ヤバイ!!結乃先輩に知らせないと!!」

「待て」

 俺はニコニコしながら水月の腕を強く握った。

「ひっ……!?」

「僕の彼女と喋らないでね」

「お、お前化け物だ!!」

「なんでそんなこと言うの……?僕、みんなに可愛いって言ってもらってるだけなのに……化け物なんかじゃないよっ……?」

 ぶりっ子して、俺が被害者ぶっている。

 ついでに言うとクラスのヤツらが聞いている為、これで加害者は水月になった。

「おい水月〜なにしてんだよー」

「は!?おい誤解だー!!!!」

 バタバタと教室がうるさくなった。

 まぁそんなことは無視して、結乃の様子を見る。

 様子を見ると言うのは、この学校に俺だけが見れるように防犯カメラをつけた。

 もちろん許可はもらっている。

 スマホと連動しているので、スマホを見て、結乃のことを探す。

 あっ、居た。

「冬人くんっ……どうしよう……」

「もう、あんな先輩放って置いていいんじゃないですかっ……?泣きそうですよ、先輩……」

 コイツ、地味に結乃を口説こうとしてる……?

 手をギュッと握り、怒りを堪えた。

「だめっ……!!鈴くんのこと、私大好きだからっ、きっと今回も私が悪いし、許してもらわないと……!!」

 っ……結乃っ……。

「チッ」

 ん?いま舌打ちした音がしたぞ?

「結乃先輩、いいんですよ、無理しなくて、僕がいますから……!!」

 ハートマークをつけるようにそう言った冬人に、殺意が湧いた。

 ってかアイツ、薄々思ってたけど、腹黒だよな?

 チッ本当にキャラ被りってウザいな……。

「冬人くんっ……!!」

「ふふっ、可愛いです、先輩」

「へっ?」

「チューしたくなる」

「な、な!?」

 徐々に距離が縮まっていくのがわかった。

 本当なら殺しているところだが、必死に殺意を堪える。

「んっ……!」

 唇が重なったことがわかってしまった。

 あとで、ちゃんと上付けすれば、大丈夫、ふぅ、ふぅ……。

 頑張って正気を保つ。

「ふふっ、可愛い」

「なっ!?さ、最低!!!」

 正気を保つのは、これを使い結乃に謝罪させる為だ。

 本当はアイツは殺して地獄に送ってやっているところだが、いまは仕方なくないけれど、後の自分の為だ……。