【side 韡月】


 ……ああ、結乃に会いたい。

 癒されたいのにぃ……。

 婚約者を選べって言われたって、好きでもない人を選ぶ人が何処にいるっていうのよ!

 そもそも、令嬢だから普通に恋するなんて無理な事ぐらいちゃんと分かってた。

 婚約者は決められる事ぐらい分かってた。

 だけど、結乃のように甘い恋をしてみたい。

 結乃を見ていたら、私の令嬢だから諦めなきゃならない事が嫌になってきた。

 結乃に、勇気をもらって、そう言う感情が浮き出てきたんだ。

「韡月様」

「あ、水月……」

 水月は、私の執事。

「コンヤクシャが来てるらしいですけど」

「行かないと言って」

「ですが……」