【side 鈴】

 っ……、電話してる先輩の声が可愛くて仕方ない……。

 なんであんな可愛いんだろ……。

 学校に着くと、なにやら校内が騒ついていた。

「なぁ、見たかあの美人」

「見た見た!強いくせにすげぇよな……」

 なんの噂だ?

 どーせ暴走族の女総長とかの噂だろ。

 そう思い、教室に入った。

 するとすごい勢いでクラスの男子に話しかけられた。

「な、なぁ、お前スズだろ?“結び”さんの事についてなにか知らねぇのかよ!」

「は?結び?」

 っ、なんで今更結びなんて……。

 ま、さか!?

 俺は慌てて教室を飛び出して、結乃先輩のところに向かった。

 もし、間違っていなければ、昨日結乃先輩に聞いたから……、先輩が本当の事を言おうとか思って……。

「先輩!!」

「鈴くん!」

 ……どうやら俺の予想は当たってしまったらしい。

 そこには、ストレートな黒髪を靡かせた、顔が整い過ぎてる少女が居た。

「あの、朝ごめんね……!!寝坊して……」

「そんな事より、結びなの?」

「え、えっと、そう見たい」

「……」

「ごめんね……黙ってて」 

 ……よく、いままで隠し通してこれたな……。

 やはり、結びは演技力もいいらしい。

 だけど、みんな知る結びがこれほどに近くに居たなんて……。

 気づかないなんて情けない……。

「先輩、綺麗」

「え?本当?」

 黒髪になると、白髪のときよりも美人差が増した気がする。

「えへへ、鈴くんにそう言ってもらえて嬉しいなぁ。」

 嘘偽りなく微笑む先輩。

「……なんで、変装解いたの?」

 大体は読めてるんだ。

「え、えっとね、鈴くんにバレかけてたから、もういっかなって」

「っ、つまり僕をきっかけに?」

「う、うん」

 ……なんか、俺の為みたいで嬉しいっていうかなんというか……。

 こんなに可愛いのに、すごく強いって、なんというかもう説明もつかない。

「……じゃあ、オウも知ってる?」

「え、えっと、オウさんとは面識がなくて……」

「そっか」        
                   
 アイツはこの学校にいる。
                    
 そして、先輩も知っている。