棗くんのキスには殺意がある



お姉ちゃんがテーブルにスマホを伏せた。

さっきと違って、きちんとわたしに向き合う姿勢をとり、薄く細めた瞳はなんだか楽しげ。



あした、逢坂 棗から連絡がくる?




「くるわけないよ」

「くるよー」



「テキトウなこと言わないでっ」

「言ってない。おねーちゃんは妹にテキトウなことは言わないの。明日きっとくるから待ってなさいな」



「くるわけないけど。でも、なんでそう言い切れるの」

「そーいうふうにできているから」



あまりのいい加減さにため息が溢れる。


お姉ちゃんの発言には時々、もしかしてこれは世の中の核心をついているんじゃないかと思わせる謎の引力があるのだけど。

マイペース且つ超がつくほどの楽観的な性格が、他人とは違う独特な雰囲気をつくりあげて、周りにそう見せているだけなんだと思う。



……だから、こんなの当たりっこない。



「世の恋愛は、そーいうふうにできてるの。恋の神様は、ギリギリのラインでひとを弄ぶのが大好きなんだよ」