棗くんのキスには殺意がある





玄関が開いて、中に押し込まれる。


ここはわたしの家だと言うのに。我が物顔で連れ込んだ棗くんは、ちゃっかり内側から鍵まで掛けて。



「茉結のオネーサンは、今日も帰ってくんの遅い?」

「……わかんない、でも、」


「最低10時までは帰ってこないで、って連絡入れといて」

「なんで、……っ、んん、」




強引な熱に呑み込まれる。

一度やわく噛んでから、角度を変える。


どこまでも慣れていて器用なこの人は、キスを続けながら、わたしの背中で手のひらを遊ばせる。




「っぅ、……やあっ」

「縦方向になぞられんの好きだよね。きもちー?」

「、ん…っ」



答える前に塞がれた。

塞いでくれてよかったと思う。



棗くんに触れられるところなら、ぜんぶ気持ちいいって。
伝わる熱で侵されたわたしは、そう口にしかねないから。