棗くんのキスには殺意がある




メッセージの通知音が鳴ったのは、ちょうど家に着いて、玄関に手を掛けたときだった。



もう1ミリの期待すらなくなっていたらしく、心臓がドキリと反応することもなく。


どうせ公式アカウントか。

サヤカちゃんか、お姉ちゃんか。



そう思いながら画面を見た直後、息を呑む。




【 茉結、会いたい 】



おかしい。おかしいんじゃないの。

お姉ちゃんのふざけた予言が当たるなんて。


休み時間に、わたしじゃない女の人と約束していた男が誘ってくるなんて。




うっかり画面を開いてしまって焦った。

既読をつけたまま何も打てない。あっという間に1分が経過する。



のちに、今度は通話の呼び出し画面に切り替わる。



「いや、ちょっと、」



焦りが声に出た。

逢坂 棗は、表示された名前だけでわたしの自制心をあっけなく崩してくる。




「……、……もしもし、」

『茉結、今どこ』


「どこって、家」

『近くにいる。から、今から行くわ』