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「ねえ見て棗くんいる。あそこ。遠目からでもわかるねー、顔がいい」
体育が終わって更衣室に向かっていたとき、周りの声につられてつい顔をあげてしまった。
およそ20メートル先の渡り廊下。
ださいはずの体育ジャージも、逢坂 棗が着るとセンスよく映るから不思議だ…と、そんなことを考える暇もあまりなく。
わたしの視線をたどったサヤカちゃんが、隣で眉をひそめる。
「うわあ、3年女子に絡まれてますね〜。まゆちん、突っ込んでかなくて大丈夫? 棗くんはわたしのーって言わなくてへーき?」
「やめてやめて。全校女子にいじめられる未来しか見えない」
「もう〜。そうやってまゆちんが消極的だから、あっちも身を引いちゃって連絡途絶えるんじゃないの」
「違うって。わたしの積極性は関係ないのー。逢坂くんがどうしても暇で、どうしても相手が見つからないときの妥協がわたしなんだから。……てゆーか! べつに付き合ってるわけじゃないし。……そもそも。もう終わるし、今日で。」



