可憐な花には毒がある



『っ、ぅ……ひっく……』



凝り固まっていたものが、がらがらと音を立てて崩れたような気がした。



廊下のど真んなかでぼろぼろと泣き出してしまったわたし。


泣いている顔を見られたくなくて、どうにか隠そうとしていたら視界がふっと暗くなって。


……抱きしめられた?



そして、他から見えないようにしてくれてることに数秒遅れで気づく。


頭だけを抱えられているから、はたから見ればこっちのがよっぽど目立っていたと思う。




『大丈夫だって。ほら、失敗しても最後に笑えたらそれでいいってアナも言ってたろ』

『しらっ、ないぃ……』

『え、アナ雪みたことねーの?』



わたしがノートを落としてしまったことで泣いていると思っているんだろう。


上から落とされる声は柔らかさと、優しさを帯びていた。



女の子に対しては平等にそうなんだろうけど、このときの出来事により。


わたしはあっさり時雨に落ちてしまったのである。