「……わたし、フラれてばっかだね。そんなに魅力ないのかなぁ」
さっきしたばかりの丸岡くんとの会話を思い出す。
つらそうに、哀れむように彼はこう言ったんだ。
『萠音ちゃん。俺はあいつの代わりじゃないよ』
って。
これ以上泣きたくないのに。
あの頃みたいに笑いたい。
喉が鳴るまで笑いたいんだよ。
ねえ、
「──────れんたろ……蓮太郎、」
「……名前で呼ぶなって。言ったろ。それは彼女の特権だから」
だったらそんなに、
わたし以上に切なそうな顔なんてしないでよ。
時雨の心は見えそうで見えないすり硝子みたい。
その傷が仕様かそうじゃないかなんて、皆目見当もつかなかった。
「もう戻れない。いや……戻らないよ、お前とは」
まっすぐにわたしの目を見つめる時雨は、まぶしそうに目を細めて笑った。
「萠音に俺はもったいない」
どうすることもできない。
だって、ひとしきり泣いたわたしは……
もう笑うことしかできないのに。
「自分で言うな、ばか」
『可憐な花には毒がある』end.



