可憐な花には毒がある



また、「萠音」って。

呼ばれるたびに思い出すのは、時雨と付き合ってる頃の記憶。





『俺、やべーことに気づいたんだけど』

『えっなになに?』


『萠音って限界まで笑ったら“くぎゅっ!”って喉が鳴るよな』

『えー!なにそれ、なにそれ!わたしそんなの言ってるの!?』

『ほらいま!くぎゅっつった!わははっ、やっべぇ』



けらけらとめずらしく無邪気に笑う時雨の笑顔が、脳内で再生される。



と、同時に。




「萠音は笑ってるほうが可愛いよ」



現実の時雨がわたしにキスをする。



……口に、されそうになった。


なのに。



直前で止まった時雨はすこし眉を寄せて、目を閉じたあと……キスをした。


口じゃない。





……喉。


そこに落とされた触れるだけのキスは、その部分からじんわりと甘く痺れるようだった。