「へえ。なんでフラれた?」
「ぜっ、……たい言わない」
「死んでも?」
「うん」
数十分前にクラスの教室で言われたこと。
『萠音ちゃん。俺は──────』
呆然とするわたしに、いつも元気で柴犬みたいな丸岡くんはすごく悲しそうにしていて。
明るい髪色もそのときばかりはくすんで見えた。
「そっ、か。フラれたか。いいやつだと思うんだけどなぁ、萠音は」
「だったらなんでフッたのさ」
「俺に言われたってわかんねーよ」
わかるでしょ。
説明してよ。
ちゃんと口にして教えてよ、時雨。
わたしバカだから、頭ないから、言葉にしてくれないと理解できないの。
「丸岡くんだったら綺麗に染めてくれると思ったんだけど。……なあ、萠音」
もはや抵抗するのもあきらめて時雨の胸に顔を埋めていたら。
頬に手を添えられて、そっと上を向かされた。



