可憐な花には毒がある




「弱ってるところをやられた。弱みにつけ込まれたんだよ」

「人を詐欺師みたいに言うな」



たしかに詐欺とはすこしちがう。


付き合いはじめて性格が豹変した、なんてこともなく。

優しい時雨のままだった。


まあわたしと付き合ってるときもいろんな女の子に手を出してたって言われてますけどね。

本人は否定してるけど、どうだかなぁ。




「萠音は良くも悪くも純粋すぎんだよ。白い花は染まりやすい」

「わたしは花じゃないよ」



頭に乗せられたままの手を払おうとした。



その手を、ぱしりと取られる。




「なっ、」

「萠音」



引っ張られて、すぐに時雨の胸のなかに収まった。


どくんと心臓が嫌な音を立てる。


どくん、どくん。

身体を巡っているなにかが反応するように熱くなっていく。


これは、拒否反応?

それとも……




「しぐれ!やめて……っ」

「あいつはまだ帰ってこないから」

「そうじゃなくてっ、」



ぐっと押し返すけど、すこしも腕の力を緩めてくれない。