「なあ、絢斗だってこんなうるせーヤツより木村さんみたいな子のほうが好きだろ?」
彼の言葉に、絢斗くんが「は?」と言いながら私の方を見る。もう一度、絡まった視線。
「いや、別に」
「っ……」
私の目を見たまま言う絢斗くんに、先に視線を外したのは私の方だった。
わかってる、そう言うと思った。
いつも冷たい絢斗くんだから、私のこと好きなのかどうかもわからない絢斗くんだから。
だからいい答えなんて、期待してなかったけど。
だけどこの空気に、冷たい目に、ひどい言葉に。胸の奥がひりひりして、痛い。
まだ治っていなかった傷を、無理やり開かれたみたいだった。
「どうしたの?乙葉、具合悪い?」
うつむいていた私に気付いた悠里ちゃんに心配されてしまって、慌てて首を振る。
悠里ちゃんには今の話は聞こえていなかったみたいだ。
それからもちらちらと絢斗くんの方を見てしまったけれど、一度も目は合わなかった。



