舞い上がっていた気持ちが一気に急降下する。紗英、って、女のひとだよね。 もう夜なのに、電話するの? ちらりと絢斗くんを見たけれど、特に動揺している様子もなくて。 「9時半」 メッセージには触れずに、時間だけを読み上げる。 「あ……じゃあ、帰ろうかな」 何か聞く勇気は出なくて、へらりと笑って鞄を持つ。 どうして何も言ってくれないの? 仕事の電話だよ、とか。明日の撮影のことだよ、とか。 嘘でもいいからひとこと言ってくれたら、私ちゃんと信じるのに。