絢斗くんがどうしてモデルになったのかとか、どうやって過ごして来たのかとか、私とどうして付き合ってくれたのかとか、よく考えたら私は何も知らなくて。
絢斗くんも、私が前の学校で何をしていたかとか、私はどう言う人なのかとか、どうして絢斗くんを好きになったのかとか、そういうの何も知らないんだ。
そういうことを怠って来たツケが、今になって回って来ているみたいな気がする。
「仲直りとかじゃなくね?」
「そう、だよね」
そうだ、仲直りとかじゃない。
終わりたくないとかじゃなくて、私たちもしかしたら、まだ何も始まってなかったのかもしれない。
形だけ付き合ってるけど、お互いのこと何も知らなくて。
それをここからやり直すことってできるんだろうか。
「……あの、絢斗くん」
何か言わなきゃ、と思って名前を呼んだ瞬間。
「乙葉、久しぶり〜」
場違いに明るい声が飛び込んできて、驚いて振り返る。



