「絢斗くん……!」
絢斗くんはゆっくり振り返って、なに?と少し怠そうに聞いた。
それだけで私は萎縮して視線を落としてしまうけれど、ここで逃げちゃだめだ。
本当に絢斗くんと、これで終わりになっちゃうなんて嫌だ。
「あの、仲直り、したくて」
勇気を出してそう言ったけれど、絢斗くんの表情は変わらない。
「俺らって喧嘩してたんだっけ?」
「喧嘩、っていうか……」
そう、喧嘩じゃないからどうしたらいいかわからないんだ。
謝って済む問題じゃないことは私も気付いている。
私が前の学校で何があったかとか、絢斗くんが私をどう思ってるのかとか、私のこととか、絢斗くんのこととか。
そういうの全部話し合わないと解決しないのかもしれない。
今まで、自分たちのことはなかなか話さなかった。
割と上部だけの会話をして来た気がするし、家にも行って、キスもして、最後まではしなくてもキス以上のことはして、それなのに私たちってお互いのことを何も知らない。



