きみは微糖の毒を吐く




「……ごめ、帰る」



消え入りそうなほど小さな声でそう呟いて、走って絢斗くんの家を出る。

 
絢斗くんの驚いた声が後ろから聞こえたけれど、振り返らないまま走って家に帰った。




「っ、うう……」



──『めんどくさ』




さっきの絢斗くんの呆れた顔が、頭から離れない。

絢斗くんも私のこと嫌いになってしまったんだろうか。


友達だと思ってた人たちに突き放されたあの感覚が、鮮明に蘇ってくる。



絢斗くんともあんなふうになってしまったらどうしよう。


絢斗くんは私のことを好きで付き合ってくれてたわけじゃないかもしれなくて。


私たちの関係を誰にも言いたくないほど、私と付き合ってるって知られたくなくて。

絢斗くんが、私を手放さないために必死になってくれるなんて想像できなくて。




……ああもうきっと終わりだ。




絢斗くんは私を追いかけてなんか来ないし、私と別れたくないなんて思ってない。


明日から絢斗くんと私はただのクラスメイトになるのかな。

挨拶も返してもらえないのかな。もう二度と家になんて呼んでくれないのかな。