「お前からすれば?」
「え」
「いーよ、好きなだけして」
意地悪な笑みにすら、胸がきゅんとしてしまうんだからもう手遅れだ。
きっと私、絢斗くんから逃げられない。
そっと顔を近づけて、薄くて綺麗な唇に触れる。
ちゅ、ちゅ、と繰り返して、いつも絢斗くんがするみたいに、だんだん角度を変えていく。
もっと深くなろうとしたキスに、絢斗くんが眉を寄せた。
「どこで覚えたの、それ」
「絢斗くんが、教えたんだよ」
「……お前、本当タチ悪いな」
形勢逆転、とでも言うように、今度は絢斗くんからの甘いキスが降ってくる。
さっきまではできていた呼吸が、うまくいかない。呼吸が乱されて、酸素が入って来なくて、涙が浮かぶ。



