「……好きだから、不安だったんだもん」
小さな声で呟いたら、絢斗くんは表情を変えないまま私を見る。
「で?俺にどうしてほしくて来たの?」
「……奪いに、来ました」
私の言葉に絢斗くんは少し面食らって、それからくくっと喉を鳴らして笑った。
「へえ、奪いに来たんだ」
「っ……」
恥ずかしいことを言ってしまった自覚はあるから、繰り返さないでほしい。
頬を赤くして俯いた私の顔を、揶揄うように覗き込む絢斗くん。
顔が近くてもっと恥ずかしくなる。
ていうか私、お風呂上がりだし。
メイクしてないから、あんまりじっくり見られたくない。
慌てて顔を隠すけど、絢斗くんにはばれてしまったらしい。
「風呂上り?」
「う……うん」
そんな絢斗くんはお風呂上りでも完璧な美しさを保っていて、むしろノーセットの髪は無防備で可愛いし。
私しか知らなかったはずのダル着の絢斗くんを、他の女の子にも
見られてしまったことがモヤモヤするくらいだ。
お部屋での絢斗くんを見れるのは、私の特権だと思ってたのになぁ。
……まあ、もしかしたら他にもそういう女の子はいるのかもしれないけど。



