「っ、ひゃ」
絢斗くんの指が内ももをなぞった瞬間、思わず声が漏れてしまって。
慌てて周りを見回したけれど、みんな自分たちの会話に夢中で聞こえていないみたいだ。
心底ほっとして、それから絢斗くんを睨む。
「ちょっと、絢斗くん!」
くくっと、意地悪に笑う絢斗くん。
……ああもう、私その顔に弱いのに。
そんな可愛い顔されてしまったら、怒るに怒れなくなっちゃうじゃないか。
「……乙葉」
小さな声、耳元で名前を呼ばれて、ぴく、と肩が揺れる。
飛行機の座席は2席ずつ区切られていて背もたれも高いから周りから見えにくい状況だからって、絢斗くんどうしたの!?



