ぽつんと残された私の傍にはキーナがいるけれど、どうやらキーナも帰る身支度を進めている。


こいつ……私を裏切る気満々じゃない、それにキーナからは報告も何も一切言われていない。


「それでは、ローズベリア様。私もこれで」


「お前には報告は受けていないのだけれど?」



にこやかに微笑むキーナに、引き笑いを浮かべつつ逃がすものかとそう言うが、それでもキーナの表情は乱れることはない。



「お嬢様、この間手渡した書類と一緒に提出させて頂きましたが……もしや、書類に目を通していらっしゃらないのですか?」



やや哀れんだ表情でそう言うキーナに、私はもう敗北を認めざるを得ない。


私は益々顔を引き攣らせキーナと視線を合わせないよう明後日の方向を見ながら、思い出したと言わんばかりに無駄に頷いた。



「あ、ああ!!そ、そう言えばそんな手紙、確かに受け取ったわね。ちゃっ、ちゃんと書類にも手紙にも目を通したに決まってるじゃない!!」

「では、そういう事ですので。私はこれで」



キーナも綺麗にお辞儀をしてみせると、私を見ることなく部屋から出ていった。


本当にあの悪知恵はどこから生まれてくるのか、あの頭の中をカッポリ開いて見てみたいものだわ。