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次の日、キーナや侍女達が楽しそうにハロウィンナイトのことを語り出す中で、私はお父様に向かってニッコリと笑ってみせた。
「お父様、私嫁ぎ先が決まりました」
珈琲を楽しんでいたお父様はいきなりの私の申し出に、思わず珈琲を吹き出した。
咳き込むお父様を見て少し心配するけれど、私はもうそんなお父様を甘やかしたりはしない。
「ロッローズベリア?!一体誰と?!」
そう言ったお父様の言葉をしかと聞いた私は、扉の向こうで待っている彼を呼ぶ。
部屋に入ってきた彼をにこやかに微笑みながら、私は紹介して差し上げた。
「私の想い人のルーベルト。ああ、彼のこの翼は自前なのよ」
「初めてお目にかかります。魔界の第一王子、ルーベルトと申します」
「えっ?!」
思わぬ所で私が驚きルーベルトの顔を見ると、何故か勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「そんなこと聞いてないわ!」
「地位なんか言っても、ローズベリアは気にしないと思って」
「まあ……そうだけれど」
一つ上手を取られた気分になりつつも、放心状態のお父様を見て我に返る。
「そういう事で、お父様。私魔界に嫁ぐことになりましたわ」
「ローズベリア……何でも欲しいものは与えてやる、だから……だから……!!」
ギリギリ保っている意識で必死に語りかけてくるお父様に、私は飛び切りの笑顔を向けて腰に手を当てた。
「残念ながらお父様。私、そんな甘い誘惑は通用しませんの」
ハッキリと言い放ち、ルーベルトの手を取って高笑いをしてみせた。
その高笑いは屋敷を越え、この広い私がまだまだ知らない素敵な街に響いたのだった。



