悪役令嬢には甘い言葉は通じない。




……いつか本当の私を見てくれる人が私を迎えに来てくれる、そう信じて私は縁談話を断ち切って、毎年知らない誰かから送られてくる恋文に、胸を踊らせ淡い期待だけを持ち続けているのだから。


そんな小さな弱い自分が心の中に現れたと同時に、ルーベルトが私の名前を呼んだ。


後ろから抱きついていたのを止めて、私と向き直るように真っ直ぐ立つ真っ黒な彼にそっと頬を撫でられる。



「頑張って伝えてるつもりだけど、遠回しの言葉は君には通じないんだね」



少しひんやりとしたその手の感覚に、何故かドキリと胸が高鳴った。


その感覚に意識を向けていると、その意識を逸らすようにルーベルトが私の視線を捕らえて離さない。



「君のことが好きだ、ローズベリア」



放たれた予想外の言葉に、ようやく私は口説かれていたんだと気づく。


自分ではコントロール出来ない心拍が、やけにうるさくて彼に聞こえてしまうのではないかと心配になってくる。