悪役令嬢には甘い言葉は通じない。



「トリック オア トリート」


「へっ?」



その場に片膝をついてまるで紳士のように、慣れた動きで私の手を取って手の甲にキスをしてきた。


まるで仮面舞踏会のワンシーンみたいと、少し面白くなって私はお菓子の入った籠を口元に持って行く。


ルーベルトを見下ろしてお菓子をチラつかせて、お返しを決めてやるつもりだった。



「そうやってお菓子をくれないって言うのならーー」



一気に立ち上がって再び私を抱き上げたルーベルトは、そのままここへ来た時のように空へと飛び立った。


夕日は夜に飲み込まれ、チラチラと瞬く星々が空に浮かぶ。


この光景だけでも私には宝石に見えて、あれだけ強請った宝石やアクセサリーがくすんで見えてしまいそう。


風を切るこの感覚がこんなにも気持ちがいいものなんて、知りもしなかった。