悪役令嬢には甘い言葉は通じない。



伯爵令嬢がこんな淫らなことを街中でやっているのが誰かに知られてしまったら、それこそ怒られてしまうわ。


ルーベルトから離れようと身を捩るけれど、彼の腕の力が強すぎてビクともしない。



「ちょ、ちょっと!ルーベルト!離してくださる?」


「ん〜どうしようかな」


「怒りますわよ!」


「威嚇してる子猫みたいで、そんな君も可愛い」



私の頭に頬を擦り寄せてくるルーベルトに苛立ちが勝った私は、彼の足をキリキリと踏みつける。



「痛っ!」



反射で私から離れたルーベルトに向かって、小さく舌を出してそっぽを向く。


伯爵令嬢に気安く触るなんて、許されることではないのよ。



「隙を見せてくれたと思ったのに、困った子猫ちゃんだ」


「ふん」


「そんな怒った顔も可愛いけど」


「え?」


「あ、そうだ」



痛みが落ち着いたのか、またしても私との距離を縮めてくるルーベルトに今度は打つ手がない。

ただ眉間にしわを寄せて威嚇する体制だけは整えておく。