時には風になって、花になって。





暗ったるい小屋、水牛に餌を与えながらもその男の子は会話を続けた。



「止んだ所なんか見たことない。オレが生まれる前からずっとさ」



名を縁(えにし)といった。

歳はサヤと同じであった。
その為にジロッと睨んできたのだろう。


雨の止まない村───ここはそんな場所らしい。

どうやら村を納める長が厄介だという。



「そいつが妖ということか」


「もしかしてあんた達が最近噂の駆除してくれるヤツらか?止めときな、長は妖怪なんかじゃない」



人間だよ───、

少年は立ち上がって紅覇を見つめた。



「まずはそいつと落ち合わねば解るまい」


「あ、おい…!ちょっと待ってくれよ…!道は分かるのか…!」


「…貴様も来い」



そして縁までも連れて来てしまった。

正しくは道案内人を付けただけだ。



「おい、本当に行くのか…?止めといた方がいい。あんたら殺されちまうよ」


「戯(たわ)け。誰に言っている」



邪悪な都へと潜入すれば、まるで私達を待ち構えていたかのように何重にもされた扉が開かれる。