時には風になって、花になって。





(紅覇、サヤは元気だよ)



ピーーーッ…。



(あのね、縁談駄目になっちゃったの)



ピーー……。



(話せないから、サヤは声が出ないから…だから駄目なんだって)



ピーーー…。



(でも醜女って言われた…不細工だって……もしかしたら、それも理由の1つかもしれないね…)



嬉しいとき、悲しいとき、怒ったとき、たくさん笑いたいとき。

少女はいつもこの笛を鳴らせていた。



(だって声が出ないサヤと同じで、紅覇も表情にはあまり出さなかったけど…。
本当はいつも笑ってたの、サヤ知ってるよ)



例え彼がサヤを助けた理由がウタに似ていたからだとしても。

そのときの少女からしたら、あなたは本当に神様のような人だったんだよ。


鬼なんかじゃない。
妖怪なんかじゃない。

やっぱり紅覇は最初から紅覇だった。



「ピーピーピーピーうるせェんだよ。呼んだか小娘」



ブワッと風が吹き抜けたと思えば、誰かの姿が目の前。



(いや……呼んでないです…)



全然違うもう1人の鬼が何故か来た。