(……サヤのお顔……そんなに酷いの……?)
どんな顔してる…?
思わず立ち上がって目の前の川を覗く。
ズルッ───!
(わっ…!うわぁ…!!)
バッシャーーンッ!!!
浅瀬の為に流されなかったものの。
誰かに見られていたならば恥ずかしい程に頭から落ちた少女。
『あまり遠くへは行ってくれるな。流されたら面倒だ』
それでも結局はいつも助けてくれるのは紅覇だった。
最初は親のような存在だったのかもしれない。
『ついて来るな。目障りだ』
闇夜の中、お月様が目の前にあったから。
追いかけてみたくなって。
『お前はいつどんな時でも身の危険が生じたとき、笛を鳴らせ』
遠くに、行っちゃったね。
サヤが自分から行っちゃったんだね。
離れてから2年間、1度も笛を吹かなかった。
もうサヤは大丈夫だよ、
紅覇が居なくても生きていけるよって。
そう自分に言い聞かせる為に。
ピーーー……
数年ぶりの音は、聞こえるか聞こえないかの大きさで。



