紅覇は瞳孔を開かせる。
そんなものを見ていなくとも、羅生門にはお見通しなのだろう。
「貴様を産んですぐに死んだあいつも人間になりたがっていた。…だが、言ったのだ」
まさかこの男の口からそんな言葉が出るとは。
驚くことばかりだ。
いつ、貴様はそこまで情に惑わされるような男になった。
「妖怪も人間も変わらぬ、と。誰かを愛し、愛され、嘆き哀しむ。
いつかお互いが分かり合える世はきっと来る、とな」
それが遺言だ───羅生門はふと、何かを思い出すかのように目を伏せた。
私は人間に2度、裏切られている。
ずっと傍に居てくれると言ったではないか。
お前が私の左腕になると言ったではないか。
「…サヤという小娘が我に言ってきた」
今日はよく喋る。
そんなにも良いことがあったのか。
なにをそんなに面白がっているのだ。
貴様らしくない。
「紅覇という存在を生み出してくれてありがとう、と」
次の言葉に紅覇はバッと振り返った。



