「先生に鍵借りてきた。戻ったらお前どこにもいねぇから」


蓮くんは、はぁ……っと胸に溜めた息を吐き出した。


「……っ、」


どうしてここがわかったのかな……。

秋元先輩に聞いたのかな……。

聞きたいのに、声に出来ない。


「名村‪も心配してる」


そっか……。

きっと二乃ちゃんが蓮くんに知らせてくれたんだ。

蓮くんの腕に包まれて、温かくて。

安心したら、途端に涙腺が緩んでしまった。


「よかった、歌鈴が無事で。戻ろう?」


ふっ、と目尻を下げて微笑む蓮くんに、私は頷いてみせた。

今口を開けば、高校生にもなったっていうのに泣いてしまいそうだったから。