「そんな鳴らさなくてもわかるって」


「あっ、コウくん。だってなかなか出てこないから」



全然出てこないからまだ寝てるのかと思ったよ。



「で、今日どこ行くか決めたの?」



隣を歩くコウくんがそう呟く。


そういえばまだコウくんに行き先を伝えていなかったっけ。



「えっとね、ヒントは懐かしい場所!」


「……わかんないから。小学校とか?」


「違うよ!」



確かに小学校も懐かしい場所だけど、デートには選ばないよ。


コウくん全然考えてないでしょ。


そう思ってしまうくらい隣で大きな欠伸をしていた。



「もー、着いてからのお楽しみね」



目的の場所までは駅前でバスに乗って1時間くらい。


小さい頃はよくコウくんと家族ぐるみで遊びに言ったこともある。


コウくんと一緒に最後に行ったのはいつだっけ?


多分それこそ小学生の頃だったかもしれない。