キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

「先輩、歩けますか?」


彼はよほど痛むのか、私の質問に小さくうなずくだけ。

グラウンドの隅のベンチまで連れて行き、すぐに氷水とタオルを用意した。


「見せてください」


ずっと顎を押さえたままの彼の手を外してみると、先ほどより腫れている。

骨折していなければいいけど……。


「冷たいですけど、失礼します」


私は冷たいタオルを患部に当てた。
先輩は目を閉じて黙ったままだ。


それから十五分。
吉岡先輩が「車、お願いできた」と戻ってきた。


「柳瀬さん、いつもの整形に一緒に行ってくれる? 電話入れておく」
「わかりました」


吉岡先輩に指示された私は、池田先輩と自分の荷物を持ち、すぐさま病院に走った。



部員がケガをするたびにお世話になっている病院は学校から十分ほどの距離にある。

すぐにレントゲン検査になり、骨には異常がなくてホッとした。


「よかった……」