キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

次のボールを監督が打つと、池田先輩はセカンド方向に走る。

今度はグローブに収まりそうだと思った瞬間。


「あっ!」


先輩の目の前でボールがイレギュラーバウンドを起こし、彼の顎に直撃した。

私は倒れ込んだ先輩のもとに走る。


「先輩!」
「池田、大丈夫か?」


監督が問いかけたのに、痛いのか彼はうずくまったまま返事もしない。


「まずいな。予選あるのに」


池田先輩を取り囲んだうちのひとりがつぶやいた。

秋季大会の本選は四日後の日曜日なのだ。

おそらく四番を任される彼が抜けるのは痛い。


「大丈夫……」


ようやく先輩の声が聞けてホッとした。

でも、ゆっくり起き上がった彼のあごから頬にかけて真っ赤になって腫れている。


「柳瀬、冷やしてくれ。誰か、職員室に行って車出してもらえるように頼んで」


監督の指示に従い、皆がテキパキ動きだす。