キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

眉が上がった怒りの形相で須賀くんをにらむ中江くんが右手を振り上げたので、慌てて立ち上がりその手を止める。


「中江くん!」

「離せ。一発殴らないと気が済まねぇ」

「ダメ。試合出られなくなっちゃう」


必死に練習を積む彼が、私のせいで試合に出られないなんてありえない。
それだけじゃない。最悪、旭日高校自体が出場資格を失う。


「クソッ」


中江くんは私の言葉に反応して、渋々手を下ろしてくれた。


「なに興奮してんだよ」


ようやく解放された須賀くんは、肩で大きく息をしながら中江くんをにらんで教室を出ていった。


「ごめんね、ありがとう」

「いや。頭に血が上って……。俺こそごめん」


彼は謝るけれど、中江くんがああやって怒らなければ、涙をこらえられなかっただろう。


「ちょっと頭冷やしてくる」


そして中江くんも教室から出ていった。