キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

わざとおどけた調子で言うと、中江くんは一瞬目を見開いたもののすぐにふっと鼻で笑う。


「おーこわ。鬼マネのおっしゃる通りに」


私の気持ちが届いたのか、彼は部活に行くと決めたようだ。


「鬼マネ。いつもサンキュな。でも、ちゃんと自分の心配もしろよ」


彼は私の頭をポンと叩いてから戻っていく。

やめてよ。
そんな優しい言葉をかけられたら、また泣いちゃうでしょ?


私もクルリと背を向けて、こらえきれず一粒だけこぼれた涙を拭って顔を上げる。


中江くんが苦しい気持ちをわかってくれた。
それだけで、前に進める気がした。



彼を無理やり部活に追いやった私は、帰宅する途中にある美容室に飛び込んだ。


「すみません。短くしてほしいのですが」


左側だけ短い髪に目を丸くしている美容師さんに「髪形が載ってる雑誌見せてください」と笑顔を作って伝える。