キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

気合を入れて、手首に巻いてあったシュシュでまだ長い部分の髪をひとつに束ねた。

こうすれば、ちぐはぐな髪が目立たずに済むと気づいたからだ。


「柳瀬?」
「中江くん、ありがとう。やっぱり部活行って?」
「でもお前……」


驚いた様子の彼は、足を止めて私の顔をのぞき込む。


「中江くんの筋肉が落ちたら、私が後悔する」
「一日くらいで落ちたりしねぇよ」


そんなことはわかってる。
でも、彼は毎日真剣に野球と向き合っているのに、マネージャーが足を引っ張るわけにはいかない。


「心配してくれてうれしかった。中江くんがいなかったら、どうなっちゃってたかわかんない」


少し恥ずかしかったけど、本音を口にする。
すると彼は難しい顔をしてうなずいた。


「本当にありがとう。やっぱ、鬼マネとしてはサボりは見逃せないや」