キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

その間、彼はただ黙って私の背中に手をあてて励ますようにさすってくれた。


しばらくして遠くから足音が聞こえてきた音がしたからか、彼は足下に散らばっていた髪をかき集めてゴミ箱に入れたあと、私の手を引いて準備室を出る。


「中江、どうした?」


数学の先生に声をかけられたけど、彼は私を背中に隠してくれた。


「日直なんでノート持ってきました」

「そうか、ありがとう。ん? 誰?」


しかし先生はすぐに私の存在に気がつく。


「彼女です。俺、モテるんで秘密にしておいてください。女子がうるさいから」

「生意気な。まあ、いい。部活あるんだろ? 頑張れよ」

「はい」


適当な会話をした中江くんは、先生とすれ違う際、私の腕を引いてうまく自分の体に密着させて、顔が見えないようにしてくれた。


「ちょっと待ってて」


教室棟に入ったところで、彼はスマホを取り出して電話をかけ始める。