キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

よりによって中江くんに知られるとは。
これからいじられそうで、ため息が出る。


なにも言えなくなった私は黙っていた。

中江くんもスマホを取り出してイヤホンをしたから、それからは会話もなし。

私の家の最寄り駅に到着したので電車を降りて振り向くと、彼はイヤホンを外した。


「連絡してこいよ」
「連絡?」
「化学どうすんだ?」
「あっ、忘れてた!」


宿題を教えてもらう約束をしていたんだった。


「お前なぁ。約束を忘れてたのか、宿題の存在を忘れてたのかどっち?」

「んーと、両方?」


正直に答えると、彼は口の端を少し上げて鼻で笑う。


「両方覚えとけ」
「承知しました」


かしこまって返事をしたあと、すぐにドアが閉まった。

すると彼が軽く手を挙げるので私も小さく手を振り返した。



家に帰るとすぐ、母から真奈の症状が落ち着いてきたと連絡が入り、ホッと一安心。