キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

「別に悪いとは言ってないだろ」
「その顔、言ってるから」


笑いをかみ殺している彼の顔に書いてある。


「口に出してないだろ」
「出してないけど思ってるってことでしょ?」
「勝手に決めんな」


私がむくれると、彼はクスッと笑った。



帰りの電車は朝より空いている。

でも、座れず車両の中心辺りに立つと彼に腕を引かれて、近くのポールを持たされた。


「チビにつり革は厳しい」
「届くし」


届くには届くが体勢としてはきついので、ポールのほうがありがたい。

中江くんが難なく握っているのが憎い。


「お前さ」
「なに?」
「池田先輩のユニフォーム、念入りに洗いすぎ」


突然指摘されて、目が泳ぐ。


「べ、別に池田先輩のだけってわけじゃ……」
「わかりやす」


言い訳したのに無視された。


私が池田先輩にひそかにあこがれていると気づかれたらしい。