キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

「うん。よろしく。柳瀬もありがと。人手が足りないときは手伝うから。中江が」


クスクス笑う池田先輩は、「行くぞ」と中江くんを促して部室を出ていった。



真夏の太陽の下での部活は本当にしんどい。

マネージャーの私ですら終わるとぐったりだ。


「柳瀬。水持ってきて」
「水?」


練習メニューが終わり球拾いをしていると、中江くんに呼ばれて冷たいペットボトル片手に走る。

このペットボトルは、グラウンドで動けなくなった選手のために準備してあるもので、週に数回必要になる。


中江くんの横には同じく一年の大島(おおしま)くんが座り込んでいた。


「サンキュ」


私からそれを受け取った彼は、キャップをひねるとためらうことなく大島くんの頭からそれをかける。


「大島くん、大丈夫?」
「飲め」


五百ミリリットルの水の半分くらいを残した中江くんは、今度は大島くんの口に持っていく。