キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

いつの間にかグラウンドから戻ってきていた中江くんが、ふたりに声をかける。


「なに?」
「そのテープ、ふたりで買いに行くほど重かったですか?」


うわっ。そんなにズバリ切り込むとは。


「はっ?」
「筋トレしたほうがいいんじゃね?」


中江くんの少しも遠慮のない発言に、場の雰囲気が凍りつく。

ふたりの先輩たちは顔を引きつらせていた。


「まあまあ、中江」


私たちの様子に気づいて寄ってきたのは池田先輩だった。


「お前、先輩に向かって口のきき方が悪すぎ。けど、北見と吉岡も悪い。仕事を柳瀬に押しつけるな。暑いし疲れるのはわかってるんだけど、甲子園連れてくからさ。もうちょっと踏ん張って」


池田先輩は厳しい指摘から入ったものの、最終的には笑顔でしめた。

こういうチームをまとめる力が抜群なのが、池田先輩なのだ。


「ごめんなさい。頑張ります」