しかし、小学五年生のときにテレビで見た旭日高校の死闘をどうしても忘れられなかった。

あの年は、それまで無名だった旭日高校が強豪私立の桜花(おうか)高校を破り、甲子園に初出場したのだ。

小学生ながらに、渾身(こんしん)の力を振り絞る選手たちの姿にあまりに感動して、涙をこぼすほどだった。

だから、高校生になったらマネージャーをやると心に決めていたんだ。



校舎の隣にあるグラウンドの半分は野球部が使用していて、片隅に部室もある。

グラウンドを挟んで部室とは反対側にある体育倉庫にボールは保管してあり、ボールが大量に入っているカゴはなかなか重い。

運んでいる途中で手が痛くなってきた。


「なんだよ、そのへっぴり腰。ほら、貸せ」


八月末の炎天下では重労働はこたえる。