キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

「お前さぁ」
「どうしたの?」
「どうしたじゃねぇ」


なぜか不機嫌な彼は、自分のキャップを私の頭に乗せる。


「熱中症に気をつけろってお茶配って歩くヤツが、一番なりそうなんだよ」


まったくその通りで言い返せない。


「ごめん。気をつける」
「先輩ふたりは?」


北見先輩と吉岡先輩のこと?


「テーピングテープがなくなったみたいで、買い出しに行くって」


そういえばもう一時間近く不在だけど、どこまで買いに行ったのだろう。


「信じてるのかよ」


盛大なため息をつかれた。

やっぱりさぼってるのかな?


「テープがなくなりそうだったのは本当だし」

「たく。俺はもう食ったから、お前は弁当食ってこい」


中江くんは私からトンボを取り上げて、背中を押す。


「うん。あっ、これありがとう」


被せてもらったキャップを彼に渡すと、じっと顔を見られて首をかしげる。