キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

甲子園出場の翌年からぐんと部員が増え、しかもレベルの高い選手もわざわざ旭日高校を選んで進学してくるというケースもあり、今では毎年のように甲子園出場が期待できる位置にいる。


でも、活動費がふんだんにある私立と比べると施設も道具もそろっておらず、グラウンドの片隅にある部室のドアの立て付けが悪いままずっと放置されている。


「うわっ!」


引き戸を力任せに引っ張ると、池田先輩が目の前にいたので大げさなほどのけぞった。

彼も二重のはっきりとした目をさらに大きくして驚いている。


「そんなにびっくりするなよ」
「だって……」


部室には誰もいないと思っていたのに。


「練習メニューを組み直してたんだよ。な、これどうかな」


真横に立った先輩と一緒に同じノートをのぞき込む形になり、心臓がドクドク音を立てる。

こんなに至近距離に近づくことはなかなかないからだ。