キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

私は近くに転がっていた真奈のカバンから、吸入薬を取り出して彼女に吸わせた。


「大丈夫だから、ゆっくり呼吸して」


励ますように真奈に言い聞かせた。
すると、彼女は必死に吸い込んでいる。


「そう。すぐよくなるから」


不安が症状を重くさせると知っている私は、冷静なふりをして彼女の背中をさする。

しばらくすると薬が効いてきたのか呼吸が落ち着いてきた。


騒動に気づいた吉岡先輩が傘を差しかけてくれる。


「ありがとうございます」

「大丈夫かな」

「はい。落ち着きましたので」


しかし空から降ってくる雨が次第に量を増してくる。
風邪をひかせたらまずい。


「真奈。とりあえず保健室に行こう」


提案すると彼女はうなずいたものの、まだ苦しそうで立ち上がらない。


「吉岡、福岡にあとは任せると伝えといて。俺が背負って連れていく」

「でも……」